大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)182号 判決

原告らの主張する審決取消事由の存否について検討する。

本願商標が、「特許大学院」の漢字を左横書きして成り、第二六類「印刷物(文房具類に属するものを除く。)、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品として登録出願されたものであることは、当事者間に争いがない。

原告らは、審決が、本願商標を使用する場合においては、あたかも学校教育法により設置の認可を得ている教育施設によつて発行された印刷物等であるかの如く、世人を誤信せしめ、その信頼を裏切るものであると判断しているのは誤りであると主張する。

検討するに、学校教育法第八三条の二第一項は、「専修学校、各種学校その他第一条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。」と規定し、同法第一条は、「この法律で、学校とは、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。」と定めている。

この法律の規定は、公益的な見地から、一般公衆が右に定める学校又は大学院以外の教育施設を右に定める学校又は大学院と誤認するのを防止しようとする趣旨に基づく公の秩序を定立しているものと解せられる。

ところで、本願商標は、前記のとおり、「特許大学院」の漢字を横書きして成るものであり、現代のわが国において、「大学院」の語は、大学の学部の上に置かれ、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥を究めて文化の進展に寄与することを目的とする機関を意味し、その「大学」とは、学校教育法に基づいて設置された大学という教育施設を意味するものと理解されるのが通常であるから(広辞苑、「大学」及び「大学院」の項参照)、かかる実状と本願商標の構成とを併せ考えれば、本願商標がその指定商品である印刷物、書画等に使用されるときは、それに接する一般公衆に対し、その標章の表示が学校教育法に基づいて設置された大学という教育施設に設置された大学院の名称を表示したものと誤解させ、それらの商品が右のような教育施設によつて製作、発行されたものと誤信させるおそれが多分にあるといわなければならない。そして、そのような事態は、一般公衆を誤認させる実質において、学校教育法第八三条の二第一項に掲げる教育施設以外の教育施設が大学院の名称を用いるのと変るところがないのであるから、本願商標は、商標法第四条第一項第七号に規定する公の秩序を害するおそれがある商標と認めるのが相当である。

そうすれば、審決の判断は相当であつて、原告らの主張は理由がない。

原告らは、学校教育法による設立の認可は商標登録後においても取得しえないものではないし、また、本願商標が登録された後において、既に設置の認可を受けている教育施設に本願商標が譲渡されることもないとはいえないから、単に本願商標の登録出願人が右設置の認可を得ていないことを理由に、商標法第四条第一項第七号の規定を適用することは誤りであると主張するけれども、もともと、商標法は、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、産業の発達に寄与し、あわせて、需要者の利益を保護することを目的とするものであり、ひいて、商標は、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用をするものとされており、また、自己の業務に係る商品について使用をする商標について、商標登録を受けることができるものであるから(商標法第一条ないし第三条参照)、商標の登録は、当該商標を使用する意思のある者に許されるのが制度の本来の趣旨であり、特段の事情のない限り、登録商標は当該登録の出願人によつて使用されるものとするのが自然であつて、本件訴訟において原告らが主張するような右特段の事由を認めるに足りる証拠は存しないから、原告らの主張は理由がない。

さらに、原告らは、審決の判断は特許庁の取扱いとしても一貫性を欠くものである旨主張するけれども、仮に原告ら主張のように「大学」の語を含む商標が現に登録されているとしても、いずれも本願商標と対比勘案するに適切でなく、既述の判断を左右することはできないし、また、そのような事例の存することが裁判所の判断を拘束すべき根拠もないから、原告らの主張は理由がない。

〔編註〕 本件と同趣旨の判例として次のものがある。

昭和五六年八月三一日東高民一三判・昭和五五年(行ケ)二一三号

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